『わくアニ』でグラフィックパートの室内とサーカス外観を担当させて頂きました。Sと申します。

短いようで長かったような制作の日々を振り返ってみますと、実に様々なことが思い起こされます。
今回はグラフィック作業者の視点から、作業時に施した工夫などを拾いあげてみたいと思います。
普通にゲームを楽しんで頂いているプレイヤーの方々にはちょっと退屈かもしれませんが、
よろしければ、しばらくお付き合いください。

まず、作業の前半、「室内パート」は、前作「やすらぎ」から様々な面でグレードアップがテーマになりました。
グレードを上げると一口に言いましても、多岐にわたってしまうのですが、今作の大きな試みとしては、
背景として楽しく多様に見えて、一体感があり、主張しすぎないというのを個人的には心がけました。
牧場はスターシステムを採用していますので、キャラクター性そのものは毎回掘り下げられたり、
幅が広げられたりしていきます。
その、歴史のあるキャラが生活する室内なので、やはり室内も個性的な方が理想的です。
しかしながら、個性的な家具や小物の類はどうしても手間も容量も多くかかってしまいます。そこで、内観作業班は良く使われる家具や小道具をまとめ、汎用的なもので空間を埋めることから作業を始めました。
当然、最初は似たようなものが多く出来てしまうのですが、反対に「これだけは欲しい」という意見が得やすくなり、結果として、落とし所を見つけやすくなったと思います。

また、仕上げで乗せた陰影の表現(アンビエントオクルージョン)はWiiの性能の賜物で、
特に難しい操作無しに、雰囲気をよく出してくれたと思います。
ここは、実際の作業を数多くこなしてくれたH氏に深く感謝です。

作業の後半では、サーカス関連の作業に入りました。
ここでは、容量の問題が非常に大きなテーマになりました。
容量を減らし、なおかつ、美しく賑やかに。非常に難しい課題であり、ある意味今後も命題になるものです。

結局、私たちが採用した最大の工夫は、ほとんどのテクスチャで、カラーの表現を持たせずに、
モノクロ、セピア系の非常に小さなテクスチャーで質感を表現し、
3dモデル(頂点カラー)に彩色、アンビエントオクルージョンで光の陰影を表現する、という試みでした。
この方法は設計に時間がかかり、実装に大きな勇気を必要としました。
懐かしい手法と、最新の手法の混在はうまくいき、容量はしっかり押さえられました。
最終的にはディレクターにもプログラマにも好評頂いて大変有意義なチャレンジとなりました。

また、電飾の表現には多くの時間を割いてしまいましたが、現状でできる表現のベスト
だったと思います。このパートではモーション担当のW氏に、相当お世話になりました。
テストビューを繰り返した数では今回ナンバーワンだったのではないかと思います。

さて、長々と技術的なお話をしてしまいましたが、いかがでしたでしょうか?
ゲームのグラフィックに興味のある方々に、多少でも現場の雰囲気が伝われば幸いです。
プレイされる皆さんにはぜひカメラで、いろいろ見て楽しんでいただければ幸いです。